令和新時代の始まりと保険業の新たな挑戦

 

慶應義塾保険学会理事長

堀田一吉

 

 

 新年あけましておめでとうございます。皆様方のご理解ご支援のおかげで、昨年も、滞りなく学会活動を進めることができました。改めて厚く御礼を申し上げます。

 

 昨年は、平成から令和に改元されて、新たな時代を迎えました。そうした中で、昨年末に非常に衝撃的な報道がありました。厚生労働省の人口動態統計の推計値によると、日本人の国内出生数が86万4千人となり、統計開始(1899年)以来最少で、初めて90万人を下回ったということです。日本人の人口は、2008(平成20)年をピークに減少をはじめ、さらにその減少スピードが加速しているというわけです。

 

 戦後の保険業は、高度経済成長と人口増加のいわば「車の両輪」で大きく発展成長をとげてきました。しかし、成長の一途であった昭和時代から、平成時代に入って、保険業は大きな変曲点を迎えました。デフレ経済の常態化と人口減少時代への突入です。いま、令和の時代に入って、この状況は、さらに深刻に進むものと思われます。この厳しい経営環境の中で、保険業界は、新たな挑戦が求められているといえます。従来までの量的拡大志向から脱却して、新たに質的充実への転換をいかに図るかが問われています。そこではこれまでの保険を中心とした保障(補償)の提供から、人々の生活福祉向上にあらゆる面で貢献する「総合的生活保障産業」への移行が必要でしょう。保険業界は、人々を取り巻く死亡や病気、事故や不安など、あらゆる生活リスクと向き合って、予防(プリベンション)から保障(プロテクション)までを一体的にサービス提供をすることで、国民生活に寄り添う存在となるべきです。そのことが、令和新時代の保険業に対する社会的期待であり、社会的責任だと思います。

 

 こうした問題は、単に保険業界だけでなく、社会として追究すべき課題であり、まさに「産学協同」を基本理念とするわが慶應義塾保険学会が取り組むべき課題といえます。今年も、保険学会を議論の場として活用し、学会内外の皆さんと問題認識を共有しながら、広く社会に対する発信に努めてまいりたいと思います。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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