ダイバーシティと保険業界

損害保険ジャパン日本興亜株式会社

秘書部 特命部長 酒井香世子

 

 

   バブル経済が少し翳りを見せ始めていた1992年、損保会社に入社した。新入総合職約300名のうち10名が女性。「これからは女性活躍の時代だよ。がんばって。」と声をかけられたことを今でも鮮明に覚えている。

 

   あれから25年余経ち、私は内閣府男女共同参画局に政策企画調査官として出向。女性活躍推進のムーブメントを政府の中で体感する機会に恵まれた。ちょうど、国は一丁目一番地の政策として「女性活躍」を掲げ、2016年には女性活躍推進法が施行となった。女性活躍は今でも「旬」のキーワード。裏を返せば、まだ「あたりまえ」ではないということだ。

 

   世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダーギャップ指数(男女格差指数)」によると、日本は144か国中111位(2016年10月)。同指数は政治・経済・教育・健康の4つの部門で男女にどれだけの格差があるかを分析し、スコア化したもの。特に日本は世界に比して経済分野、政治分野の格差が大きい。改善傾向ではあるものの、順位はどんどん下がっており、世界平均の上昇に追いつくことができていない。

 

   「女性の地位向上を!」と声高に叫ぶ気持ちはあまりない。ただ、現状を知れば知るほど、日本社会は人的資産の有効活用の観点から、とてももったいない四半世紀を過ごしてしまったのではという気がしてならないのだ。

 

   世の中は、第四次デジタル革命とも言われる変化の早い時代に突入している。このような時代を生き抜く企業には、豊かな創造性を発揮してくれる多様性(=ダイバーシティ)に富んだ人材が必要不可欠だ。イノベーションは「違い」が生み出すもの。ダイバーシティが根付いた風土であれば、人々は「違い」を理解し、活かし、ビジネス・トランスフォーメーションを躊躇なく受け入れることができるようになる。

 

   日本企業が停滞し続けた一因は、過去の成功体験にとらわれて、多様な価値観をもたらす人材をうまく活用できなかったからではないか。そして、「女性の活躍」はダイバーシティ確保のためのあくまで「第一歩」。障害者、外国人、LGBT、ジェネレーション、さらには、経験、学歴、職歴、スキル、価値観などのダイバーシティも重要だ。就職活動中の学生たちも企業のダイバーシティ浸透度を重視するようになってきており、優秀人材の獲得のためにも欠かせない。ダイバーシティは企業が競争優位を保つための戦略そのものとなりつつある。

 

   保険業界は、女性社員比率が高い業界だ。当社でも2003年に国内金融機関として初のダイバーシティ専門部署を設置して以来、「Diversity for Growth」を旗印に女性活躍推進に積極的に取り組んできた。2020年までに女性管理職比率30%という目標を掲げるとともに、女性リーダー育成研修や、テレワーク・シフトワークなどといった働き方改革の取組も加速している。まだまだ取組は道半ばだが、「女性が輝く先進企業表彰」で内閣総理大臣表彰を受賞するなど、社外から一定の評価をいただく機会も増えてきた。

 

   「女性活躍?そんな言葉もありましたね。死語ですね~。」と、懐かしむような時代が早く来るよう、ダイバーシティ推進に貢献していきたい。

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