企業文化一考

アクサ生命保険株式会社

戦略プログラムオフィス レギュラープロジェクト3

マネージャー   井上  由美子

 

 

 ある外資系メーカーの日本人社長から教えられた名言がある。いわく、「日本のプロセス、考え方、価値観、などの相違を文化の違いのせいにするな」、である。

 

 この言葉は、勤務し始めたばかりの私にとても鮮烈で、なぜか強く心に残った。当時私は20代で、考えの違いを「文化」と結びつけた経験はなく、加えて外資系企業のトップが文化を引き合いに出して語るのが不思議だったからである。

 

 しかし、その後外資系企業勤務や海外転勤で、幾度となくこの言葉は振り返ることになり、今になってもあらためて企業文化の重要性を意識している。つい先日は記名式で依頼したアンケート文書が無記名で上がってきて、なぜか?と尋ねたところ、「無記名にするのが文化です」という回答を受けた。言葉の使い方が誤っていると思いつつも、久々にさきの「文化のせいにするな」という名言を思い出した。

 

 さて、「企業文化とは何か?」と尋ねると10人10色の回答がでると思ってよいだろう。

 

 経営学用語では、「ある企業が有している独特の価値体系や行動規範」としているし、また、辞書を参考にすると、以下のような記載があった。

 

 

 「企業あるいは組織の構成員の間で意識的または無意識に共有されている思考や行動の様式」

 

 「従業員が共通してもつ仕事観や行動様式」

 

 

 著述家であるジョン・コールマン*氏は優れた企業文化を構成する6つの要素を、ビジョン(Vision)、価値観(Value) 、慣行(Practice)、人材(People)、ストーリー(Narrative)、場所(Place)と述べた。これら要素は網羅的かつ説得力があって、私がもっともすんなりと理解できる定義となっている。

 

 質の高い企業文化をそなえた企業は高パフォーマンスであるという研究もあり、これからも企業文化の在り方には着目したい。企業人としても所属する組織の文化成熟度を振り返り、いかに高められるか検討してもよいかもしれない。

 

 現勤務先であるアクサ生命は企業文化の醸成について深い理解と造詣がある。数年前になるが、Organizational Culture Inventory (OCI) という組織文化を図る試みがされた。これに加えて、全世界の役員をはじめとして、管理職が自身の行動指針のアセスメントを実施した。これらは生命保険業という社会的意義と公共性の高い企業においては大変すばらしいことだと改めて感じている。

 

 *HBR.ORG “Six Components of a Great Corporate Culture” May 6, 2013                                                  

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